息吹が生きる

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人の円をわたしたちは素早く抜けて夜の道を歩いていく、信号はとっくに青なのにわたしたちは歩き出すのを忘れる、歩くと月を見る、ドラえもんのポケットみたいだねって言ってどどどどどどっど〜どらえもん〜と、二人で口ずさむ、ラジオでずっと聞いているから覚えてしまった歌、音は波に乗ってわたしたちを光らせる

同じ道を歩いてもつまらないでしょ、って別の道を歩くけれど歩いても歩いても着かない、ここは新宿、迷路へようこそ、と言わんばかりに。代々木駅、トンネルの穴のようなところへ着いてしまうけれど帰らない帰れない、くぐらないよトンネルなんて、螺旋階段をぐるぐる歩きたい、ちょっと引き返して歩いてみる、また空を見る、月じゃないよ次は。UFOがどんなふうに空を歩くか話し合う、そうこうしていて夜の散歩、夜のピクニックは終わりを迎える

ディズニーシーに行ったことがない二人にとっては印刷される紙が希望でショーでエンターテイメントだった、ポップコーンも耳飾りもないけれど、愛しい紙を眺め続ける

絵を描くことが、文を書くことが、わたしたちの息だった、生きるためだった、この世界に、この場所に、この日々に、描いて書いてそのことだけがわたしたちを救ってくれていた、孤独でうまく息ができないこの世界で、その瞬間だけは息ができた、誰に理解されなくてもいい後ろ指さされたっていい、うまく生きることができないわたしたちが見つけたたったひとつの、ただひとつの、光

忘れてしまうまえにこうしてわたしは文を書きます、あなたがいたこともわたしがいたこともあの夜もあの朝も氷る寒さも溶けない雪も自動ドアの前に立ち尽くして永く言葉を重ねていた

肯定されたかったんだとおもう、わたしに、あなたに、大丈夫、まだ生きていられるね

2:25 am  •  30 January 2018