灰の光
「朝ね、電車の中で、いずみちゃんのこと考えてた。ほんとうに、可愛いんだな、っておもって」
可愛い、という言葉に対しておもうことは、あって、それは前向きな明るさではなくて、寧ろ後退するおもいである。理解されないことのほうが多いので話すのはこの人なら解ってくれる、という確信があってのみ。ここでは慎むことにします。
けれどあなたから発せられる可愛い、それはわたしへ向けての言葉、それはどうしても単純な高揚を呼んで。えへへ、えー、えへへへへ、と、なる。
好きなひとの言葉はなんだって無敵で光っている。
私たちの指先は、灰色に染まっている。
灰色、
私たちにとっては別個の光、
大切な光。