白い日のこと

 

君を待つ。キッチンでラジオを聴きながらことことぐつぐつする、玄関の、そとが、鳴るのはどんな音よりもほんとうは、きこえてる

透明のうら、葉脈をなぞる、買いに行ってくれたところ、想い浮かべて、みれないけれど、みえる

大切な人からもらったものはどれも、なにひとつ、たべれなくて、でも心がたべているんだよ

だからあなたからもらうもの、言ってないけれど、ほんとうはお守りがいいの、どんな形のお守りでもいい、肌に近い場所でずっと憑いていてほしい、印に証になってほしい

夜泣いたのはどうしてだったかほんとうはわたしもわからないくらいのセンチメンタルで生きている

あれ、ホワイトデーってさ、白い日でしょ、しろいひ、あげる日とかじゃないでしょ、と言いながら、あなたはわたしにくれるのでした、耳に、目に、顔に、心に、ポケットに。入っていたのはチョコレートのかけらじゃなく、フィルムと一枚の写真。あなたの目に映るわたしはダブルピース。耳に白。かわいくない子でごめんなさい、でも、いつだって地獄の次の日だって笑っていてほしいとおもっています

今日は良い予感があった、お昼の屋上、春を存分に浴びて、わたしのだいすきな春を浴びて、水色、だいすきな色、世界に溶ける、たったひとつの色

発語する以前、隣からその言葉が出てゆく、ああいつだって、わたしの未来をゆく、わたしの、大切なひと。言わなくても分かってしまうんだ、いなくても心にいるんだ、あなたが、わたしが。何年たってもずっとそう。あなたもそうだったんですね。わたしはあなた以上のひとに出会えません。手を握り合い、繋いだ手、温度も言葉も心も伝う、いつだって新宿でした。東京の街、好きも嫌いも知る前からここだった。ここしか知らなくて、やっぱりここだった。夕方のチャイム、家に帰らなくてはならない小学生のように、新宿駅、終電前、もっともっといっしょにいたかったと言って、明後日会えるはずなのに明後日がうんと、遠いみたいで、だいすきなひと、うつくしいひと。

大切なもの、家族とか友達とか、そういった形容詞や名詞ではなくて、そうじゃなくて、言葉にできないけれど、あなた、とだけ浮かんでいた、あの日。それは間違いじゃなかったんだ、たったひとつじゃないの、あのあなたも、このあなたも、物理的距離が遠くの近くのあなたも、わたしの大切。目の前のあなたが、わたしの大切。目は目、だけじゃないよ、心の前。いつだって、あなたはわたしの大切だから、大丈夫、一緒に生きていきませんか

2:10 am  •  15 March 2018