静寂と謙遜

同じ夢を時折見てしまうのよね、という話を聞くことがあって、夢、わたしたっくさんみるけれど同じ夢、なんて見たことがなかった。けれどついに、出会ってしまった、同じ夢。同じ場所に同じ角度で、そう確かに俯瞰してわたしはいたのです。時間は気まぐれで、つい先日見たのは夕暮れだった。そのまえは朝日だった。また、出会うのか?見たことのない、見ていた景色に

 

時は同じくして、「アレですかぁ、リモコンとか、きちっと、おなじとこ、決まってて、そこじゃないとダメな人ですかぁ」みたいな、テレビでよく見るアレ。ふぅん、って何にもおもって、なかったけれど気が付いたのは家のリモコンはきちっとおなじとこ。箱はないけれど、みえない画角があって、その線の内側に各リモコンが順序良く並んでないといけない。しかしながら紙や衣服の散乱は横目に、移して。

 

どのようにどんな歌をどんな声を持ち寄って、歌うのだろう。わたしの興味関心はその一点で、わたしのそんな目線なんてみていない画面を見詰めてマイクの先を握りしめてただひたすらに。きゅぅ、と胸がちいさくなる。憧れと好きって、なにが、どうちがうの、どちらでもない気さえ、してきちゃう。わたしたちはまだ二〇才前半の、女の子。

 

十五時半、定刻通り、表参道の喫茶店にて。あなたの待つ席へ、ひらゆらと手を、瞬かせる。斜め向かいに座って、コーヒーと画面の光を交互に、その仕草を、みつめて、気づかない、わたしにあなたは、みていないの。近くの小学生の声と姿に微笑んで、小話をして、すぐさまあなたはわたしを見ない。その、白く発光するものの中にわたし、いないよ? ついに本を読むのにも飽きてきて、かまってよぅ、と画面を、はむっ、と食べる、ふりをする。どうしたんですか 捨てられた猫みたいな目をして ちょっと笑うからそのままの目で、拾って、ください、って言うのに、ああ見過ごすあなたがいて、はむっはむっはむっはむっはむっ

どうぞ癒されてくださいだなんて、わたしとあなたはなにを以てわたしとあなたなのでしょう 示す言葉が見当たらない 美しくかけがえないままがいい 何度だって当たり前のようにしていたけれど、そうじゃなくて、世界のすべてが失われることのまえのひであること

 

何度も同じ道を通って、新宿の、きらきらした場所

おやすみなさい、さよなら、もう出会うことのないすれ違う人たち

2:24 am  •  14 September 2016